夫婦でパースに留学中の私が、日本の薬剤師資格を活かしてオーストラリアで薬剤師登録を目指すまでの道のりをご紹介します。
前回は概要編について記事にしましたが、今回は私が実際にKAPS試験を受けたとき、どのように勉強したのか、具体的な勉強方法をご紹介します。
現在はKAPS試験がOPRA試験に変わっていますが、出題される知識やレベルはほぼ同じで、内容的には大きな差はありません。
そのため、これから受験される方にとっても参考になる部分があると思います。
この記事がおすすめな人
- オーストラリアで薬剤師として働きたいと考えている方
- OPRA(旧KAPS)試験勉強について何から始めれば良いか悩んでいる人
- 経験者視点の信頼できる情報を求めている方
目次
- KAPS試験とOPRA試験の違い
- 勉強を始める前に意識したこと
- 私が実践した勉強法【全体像】
- 各勉強法の詳細とポイント
4-1. 青本(日本の基礎知識を総復習)
4-2. YouTube
4-3. 問題集(繰り返し解く)
4-4. AIを使った効率学習(ChatGPTなど)
4-5. 計算問題対策(友人のテキスト活用) - 英語の壁と、日本語で復習した理由
- オンラインコースは使うべき?
6-1.メリット
6-2.デメリット - 模試(Mock Test)の選び方とおすすめサイト
- 勉強期間・1日のスケジュール例(リアルにどれくらい?)
- これから受ける人へのメッセージ・コツ
KAPS試験とOPRA試験の違い
以前のKAPS試験は全200問・約4時間の長時間試験でしたが、現在のOPRA試験は120問・150分に短縮され、より臨床判断・治療学・患者ケアなど実践的な内容が中心になっています。
そのため、単なる知識暗記よりも「状況に応じて判断できる力」が求められる試験に変わっています。
勉強を始める前に意識したこと
勉強を始める前に、まず試験そのものを理解することがとても大切だと感じました。
OPRA(旧KAPS)試験には公式のサンプルテストや出題範囲が公開されており、どの分野から出るかは一応書かれています。
しかし、正直に言うと、分野が膨大すぎて「一体どこから手をつければいいの!?」と感じたのが私の最初の印象です。
そこで私はいきなり勉強を始めるのではなく、まずサンプルテストを受けて、自分の現状を把握しました。
サンプルテストを解くことで、
- どの分野がよく出題されるのか
- どのような形式の問題なのか
- どのレベルの知識が求められるのか
などを具体的に知ることができます。
その結果、
- どの分野は覚えていて得意なのか
- どの分野を忘れていて苦手なのか
- どの分野を重点的に勉強すべきか
を明確にしてから、効率的に学習計画を立てることができました。
私が実践した勉強法【全体像】
サンプルテストで自分の弱点を把握した後、私は以下のような流れで勉強を進めました。
① 日本の基礎知識を思い出す(青本で復習)
まずは国家試験で使っていた青本を使い、完全に忘れている基礎を思い出しました。
② YouTubeで理解を深める(視覚でインプット)
難しい分野は、YouTubeの解説動画を使ってイメージしながら理解しました。
③ 問題集を解く(アウトプット練習)
知識を確認するためにサンプルテストを繰り返し解き、間違えたところを重点的に復習しました。
④ AIを活用(疑問点をすぐ解決)
分からないことはAI(ChatGPTなど)に質問しながら、理解を深めました。
⑤ 計算問題を徹底的に練習
計算は形式に慣れることが大切なので、友人からもらったテキストを何度も繰り返しました。
⑥ 本番前に模試で総仕上げ
最後にオンラインで購入した模試を使って、本番と同じ形式で時間を測りながら練習しました。
各勉強法の詳細とポイント
4-1. 青本(日本の基礎知識を復習)
よく出題される分野は、サンプルテストを解くことでなんとなく見えてきます。
例えば、高血圧の薬が出題されていた場合は、その疾患に関連する
- 病態や原因、メカニズム
- 薬の種類
- 作用機序
- 併用禁忌薬
- 主な副作用
などを重点的に復習する、というイメージです。
ここで注意したいのが、日本で重視されている分野が、オーストラリアでも重要とは限らないという点です。
そのため、青本を最初から最後まで全部復習するのは、正直かなり非効率だと感じました。
私は、サンプルテストでよく出る分野を把握してから、青本の該当部分だけを重点的に復習するようにしました。
この方法なら、時間を節約しつつ、試験に直結する知識を効率よく身につけられます。
4-2. YouTube (視覚で理解する)
最近は、薬の作用機序や病態などをわかりやすく解説してくれるYouTubeがたくさんあります。
そのため、青本だけでは理解しづらい内容や、もっと深く理解したい分野は動画で学ぶのがとても効果的だと感じました。
ただし、注意しなければいけないことがあります。
それは、動画を見ただけで理解した気になってしまうことです。動画は受け身で視聴できてしまうため、見終わった瞬間はわかったつもりになりやすいのですが、実際には自分で説明できなかったり、問題になると答えられなかったりすることがよくあります。
大切なのは、動画の内容を自分の言葉で説明できるかどうかです。見終わった後に、ノートに書き出して整理してみたり、友達や自分自身に声に出して説明してみたりすると、本当に理解できているかを確認できます。
英語の動画は臨床的な内容も多く、OPRA対策として非常に役立ちます。もし英語で理解できるなら、英語動画だけでも十分です。
私は、英語だけでは理解しきれない部分もあったため、まず日本語の解説動画で基礎を理解してから、英語動画で臨床的な視点を補強するようにしていました。
日本語でおすすめのサイト
ゴロー先生の動画は、イラストが可愛くて内容もとてもわかりやすいです。
薬の作用機序や病態を図や例え話を使って説明してくれるので、教科書で読んでもイメージしづらい部分が一気に理解できます。
薬についての作用機序や覚え方を丁寧に解説している薬剤師国家試験対策の動画チャンネルです。
実務ではあまり触れない有機化学分野をしっかりと復習したいときに、私はこのチャンネルを頻繁に活用しました。
長年薬剤師として働いていたため、有機化学の知識はだいぶ薄れており、思い出すことに苦労しましたが、この動画解説が大きな助けになりました。
英語でおすすめのサイト
Osmosisの動画は1本あたりがとても短く、テンポよく要点だけを解説してくれるので、わからない部分があっても何度も繰り返し見やすいのが特徴です。
また、英語でざっくり理解するのに最適なチャンネルです。
このチャンネルには解説だけでなく、練習問題の動画が含まれているので、実際に問題を解く練習としても使っていました。
4-3. 問題集(繰り返し解く)
KAPS/OPRA試験用の市販の問題集はほとんど見つけられなかったため、私は主に公式のサンプルテストを3種類ほど繰り返し解きました。
問題集が手に入らない状況でも、サンプルテストを活用することで以下のようなメリットがあります。
まず、問題形式に慣れることができます。
また、自分の不得意な分野を明確にできるという点も大きなメリットです。
さらに、試験には時間制限(120問を150分)があるため、解くスピードも意識する必要があります。私は時計を計りながら解くことで、時間配分の感覚をつかむようにしました。
最終的には、問題と答えを覚えるくらいまで繰り返したと思います。
もちろん答えを覚えること自体が目的ではありませんが、なぜその答えになるのかを説明できるようになるまで繰り返すことで、知識がしっかりと定着しました。
4-4. AIを使った効率学習(ChatGPTなど)
わからない問題や作用機序などを説明してほしいときに、私はAI(ChatGPTなど)を使って質問していました。
AIの回答は必ずしも100%正しいとは限りませんが、理解を深めるためのきっかけとしては非常に役立ちます。
特に便利だったのは、英語の問題文を日本語に翻訳してもらうことです。
OPRAの問題は英語特有の言い回しが多く、意味がわからないだけで内容を理解できないことがよくありました。そのため、この問題を日本語にしてとお願いするだけでも、解きやすさが大きく変わります。
さらに、AIは単に答えを教えてくれるだけでなく、
なぜその答えになるのかを解説してもらえる点が大きなメリットです。
自分で説明できるまで噛み砕いてもらうことで、理解が一気に深まります。
もちろん、AIの情報は100%正確ではないため、大事な部分は自分でも確認することが大切です。
しかし、疑問点をその場で解決できるスピード感や、24時間いつでも使える便利さを考えると、有効なツールだと思います。
4-5. 計算問題対策(友人のテキスト活用)
計算問題は、とにかく数をこなすことが一番大切だと感じました。
本番の試験では緊張もあり、少しでも計算に迷うと一気に焦ってしまいます。
そのため、どのような種類の計算が出るのか、何を求めるのか、どの公式を使うのかを事前に把握しておく必要があります。
さらにOPRAの計算問題では、「この計算は〇〇の分野です」といったヒントが書かれていません。
つまり、問題文を読んだ瞬間に「これは〇〇の公式を使う!」と自分で判断しなければなりません。
そのためには、
- よく出る計算パターンを理解する
- 使用する公式を暗記しておく
- 問題を見た瞬間に公式が“閃く”レベルまで練習する
ことが重要です。
私は友人から計算問題用のテキストをもらい、それを何周も繰り返し解きました。
最初は時間がかかりましたが、慣れてくると「この問題はこの公式!」と自動的に判断できるようになります。
最終的には、問題文を読む → 公式を思い出す → 計算する、という流れが自然にできるようになるまで練習しました。
計算問題は慣れるほどスピードも正確性も上がるので、早めに取り組んでおく価値のある分野だと思います。
英語の壁と、日本語で復習した理由
OPRA試験は当然すべて英語ですが、医療英語や専門用語は日常英語とは全く違います。
問題文も長く、内容はわかっているはずなのに、英語だから解けないという場面が何度もありました。正直、英語そのものが一番の壁だったと思います。
そこで私は、まず日本語で内容をしっかり理解することを優先しました。
英語で理解しようと無理をするより、日本語で病態や作用機序を理解してから英語を見る方が圧倒的に効率が良かったからです。
基礎が頭に入っていると、英語の動画や問題を見たときに、これはあの内容のことを言ってるんだとすぐに気付けるようになります。
つまり、
日本語で土台を作る → 英語で知識を上塗りする
この順番が一番効果的でした。
最初は英語が怖かったですが、この方法を続けたことで、最終的には英語の動画や問題にも慣れ、自然に理解できるようになりました。
オンラインコースは使うべき?(メリット・デメリット)
私の周りでも、OPRA対策としてオンラインコースを受講している人が何人かいました。
特にインド系の講師によるコースが多く、内容自体はとても充実しているという声も多かったです。
ただ、実際に使うべきかどうかは「自分の状況による」と感じました。
そこで、私が感じたメリットとデメリットをまとめます。
メリット
① 試験に特化した内容を体系的に学べる
自分で教材を探す手間がなく、必要な範囲を効率よく学習できる。
② 解説が丁寧で、臨床的な視点を学べる
なぜその答えになるのか、どう判断すべきかなど詳しく学べる。
③ モチベーション維持につながる
スケジュールが決まっていたり、他の受講生がいることで継続しやすい。
デメリット
① 受講料が高い
数万~数十万円するコースもあり、費用が大きな負担になる。
② 講師の英語やアクセントが聞き取りづらいことがある
私も講義を受けてみましたが、特にインド系講師の英語は私には難しく、理解するのに時間がかかりました。
③ ペースが合わないこともある
自分の得意・不得意に合わせて自由に進められない場合もある。
私の結論
英語での授業に抵抗がなく、体系的に学びたい人にはオンラインコースはとても有効だと思います。
ただ、私の場合は講師のアクセントが聞き取りづらく、コストも高かったため受講しませんでした。
その代わりに、YouTube・青本・サンプルテスト・AIなどを組み合わせて独学しましたが、それでも十分合格に必要な力をつけることはできました。
模試(Mock Test)の選び方とおすすめサイト
本番前に模試(Mock Test)を解くことはとても重要です。
理由は、単に点数を見るためではなく、本番の形式・時間配分・集中力を体感するためです。
ただ、模試もいくつか種類があるので、選び方のポイントを整理しておきます。
模試を選ぶときに大事なポイント
① 本番と同じ形式かどうか
→ 四択形式?問題数?時間制限?
本番と同じ形式で解くと「慣れ」の効果が大きいです。
② 問題の質(内容が似ているか)
→ 実際のOPRAと同じような難易度・考え方の問題かどうか。
ただ解けるだけでなく「臨床的思考」を問われるものが理想です。
③ 解説がしっかりしているか
→ 正解だけでなく「なぜ他の選択肢が違うのか」まで説明されていると理解が深まります。
④ アップデートされているか
→ 新しいガイドラインや薬が反映されていると安心です。
私は以下のサイトで模試を購入しました↓
このサイトを使って良かった点は、無制限に模試を受けられたことです。AIによってたくさんある問題の中からランダムに出題され、自分の弱点を潰すのに非常に便利でした。
解説は付いていませんでしたが、どうしても納得できない部分や答えの根拠が知りたいところについては、メールで質問でき、返信もすぐ来たため使い勝手がとても良かったです。
ただし、OPRA試験の記載が見当たらなかったため、現在はサポートが終了している可能性があります。その点だけはご利用前に確認した方が安心です。
その他模試を提供しているサイト


勉強期間・1日のスケジュール例(リアルにどれくらい?)
勉強期間はどれくらいかかったか?
- 合計:約5ヶ月
- 最初の1〜2ヶ月:基礎の復習(青本+YouTube)
- 中盤の3ヶ月:問題演習(サンプルテスト+動画+AI)
- 最後の2ヶ月:模試で総仕上げ+弱点対策
1日の勉強時間は?
- 平日(月〜水):仕事のため、仕事後や仕事前に2〜3時間程度
- 平日(木〜金):9時〜22時(食事やシャワー以外)
- 休日:9時〜22時(食事やシャワー以外)
仕事がない日や休日は1日10時間くらい、国試前と同じような感覚で、かなり集中して取り組んでいたと思います。
もちろんずっと家にこもっていたわけではなく、1ヶ月に1回くらいは外出してリフレッシュしていましたが、それ以外の日は基本的に家で勉強していました。
モチベーション管理
オーストラリアで薬剤師として働きたい」
「せっかく留学したから絶対に無駄にしたくない」
この気持ちを何度も思い出すことが、最後まで勉強を続ける一番の原動力になっていました。
そして、もう一つ大きかったのは家族やルームメイトの支えです。
勉強が辛い日も「もう遊びたい!やめたい!」と何度も騒いでいたと思いますが(笑)、それでもみんなが励ましてくれたおかげで、気持ちを立て直すことができました。
自分のためだけでなく、応援してくれる人のためにも頑張ろうと思えたことが、最後の踏ん張りにつながりました。
さらにもう一つ、私にとって大きな支えになった考えがあります。
それは、勉強だけは自分を裏切らないということです。
今までの人生で、どれだけ努力しても報われなかったり、自分ではどうにもできない出来事に直面したりすることもありました。
世の中には自分でコントロールできないことがたくさんあります。
でも、勉強だけはやった分だけ必ず自分の力になる。
努力が無駄にならないものだからこそ、私は勉強を選び、信じて続けることができました。
これから受ける人へのメッセージ
テストを受けようと決めた時点で、あなたはすでに大きな覚悟を持っていると思います。
その挑戦や、そこに費やす時間・努力は決して無駄にはなりません。
いつかどこかで役に立つときが必ずきます。頑張って後悔することは絶対にありません。
自分の可能性や力を信じて頑張ってください。
心から応援しています。


