こんにちは。現在パースで夫婦留学中です。TAFEというオーストラリアの政府運営の専門学校に通っていて無事にウェブ開発CertificateⅣを修了することができました。約1年間のプログラムでしたが、完全初心者の自分にとっては大変でした。あまり事前に情報が無い世界なので実体験をもとにプログラムの内容や留学生活について書き留めたいと思います。
この記事が参考になりそうな人
- オーストラリアのTAFE留学に興味がある人
- 社会人留学に興味がある人
- 未経験分野にキャリアチェンジを考えている人
- TAFEのコースやプログラム内容についてなかなか情報が見つからない人
- TAFE留学の事前に情報が欲しい人
ちなみに留学を開始する前に不安だったことは以前こちらに記事にしました。
目次
- オーストラリアのTAFE留学とは?基本情報とメリット
- パースにあるTAFEノースメトロポリタンキャンパス
- 私が選んだITコース:Web開発Certificate IVとは?
- Certificate IV in Information Technology [Web Development] ユニット詳細
- 時間割(スケジュール)について
- アセスメント(課題)の種類と攻略のコツ
- TAFE留学前に知っておきたかったこと- 費用・英語・準備
- まとめ
1 オーストラリアのTAFE留学とは?基本情報とメリット

そもそもオーストラリアのTAFEとはなんでしょうか。
TAFEとは”Technical and Further Education”の略です。仕事に直結する技術を学ぶことができる日本の職業訓練校にあたります。オーストラリアの州政府が運営している学校でオーストラリアにおいて重要な教育機関になります。
オーストラリアでは、日本のような新卒一括採用制度や社内研修の文化が一般的ではなく、企業は主に「経験者採用」「スキル保持者の即戦力採用」が基本です。そのため、新しい分野への転職やキャリアチェンジを希望する人々は、まずTAFEでのスキル取得を目指すのが一般的です。
TAFEでは幅広い分野のプログラムが用意されています。
- ビジネス・会計
- IT・ウェブ開発
- 看護・福祉
- 幼児教育
- ホスピタリティ(ホテル・調理)
- 自動車整備
- 鉱山技術
- アート・デザイン などなど
プログラムは基本的に 「ユニット(単位)」の集合体として構成されており、すべてのコース内容はオーストラリア政府が管理する「National Training Package(国家職業訓練パッケージ)」に準拠しています。これにより、全国で通用する統一カリキュラムと資格体系が確立されています。
ただし留学生が参加できるプログラムは限りがあるので注意が必要です。
西オーストラリア州のTAFEではたとえば最近までワイナリーのコースがあったのですが今は留学生参加できなくなりました。。
また資格、学位レベルにはCertificateからDiploma、Advanced Diplomaが用意されています。留学生が参加するのはCertificateⅢ、Ⅳ、Diplomaが多いです。Diplomaになるとより専門性が増し、さらにマネジメントも可能な人材育成を目指したプログラム内容になります。
そんなTAFEですが留学生にとってのメリットはリーズナブルなことが大きいです。
大学、大学院への留学に比べるとはるかにリーズナブルで、語学学校よりも安いです。ローカル生は無料コースもあったりします。費用はあとで触れますが、コース期間も長くその分オーストラリアに滞在できると考えるとコストパフォーマンスは意外といいかなと感じてます。
2 パースにあるTAFEノースメトロポリタンキャンパス
パースにはTAFEのキャンパスが60近く点在しています。自分が通っているのはパースシティの繁華街、ノースブリッジに位置している「ノースメトロポリタンキャンパス」。
アクセスは非常に便利なロケーションで、場所に関する不満は全くないです。キャンパスの中には図書館やPCルーム、カフェなど。他のコースの教室は入ったことがないので分かりませんが、旋盤工のような機材が置いてある部屋もあります。

中は広々としていて留学生もローカル生ものびのびと勉強しています。昼頃はとても賑やかで、カフェは列を作っています。ちなみに電子レンジや給湯器もあるのでお弁当持参派の自分はありがたかったです。一応カフェは市内と比べると安いですが、留学生は自炊が大切な節約術。。
図書館も朝から学校閉館の6時ごろまでオープンしているので課題に追われる時期は缶詰状態になりました。やっぱり勉強に集中できる環境に身を置くことは大切だと思います。パース市内には2つ図書館がありますが、TAFEに通っている学生はTAFEの図書館がなんだかんだ便利かなと思います。
3. 私が選んだITコース:Web開発Certificate IVとは?
ICT40120 Certificate IV in Information Technology [Web Development]
ICT50220 Diploma of Information Technology [Front End Web Development]
今回の留学では私はこの2つを選択しています。CertificateⅣから開始し、Diplomaの修了を目指します。
期間はそれぞれ1年間のプログラムです。2024年の1月から開始し、2025年12月に修了する予定です。
2024年12月に順調にユニットを全てパスし、無事にCertificateⅣの資格を得ることができました。とっても嬉しく達成感がありました。社会人になって勉強する喜びと頭を回転させる大変さとに苦心しながらなんとか一つの目標を到達できてホッとしました。

さて、ICT40120 Certificate IV in Information Technology [Web Development]はウェブ開発の基礎コースです。留学生も参加可能なコースで西オーストラリア州のTAFEではパースシティキャンパスで受講できます。ディプロマはGeraldtonでも開講してるみたいですね。
このコースでは、HTML、CSS、JavaScript、Python、PHP、MySQL など、実際の現場で使われている技術をしっかり学べます。デザインだけでなくセキュリティについても扱うので、初学者からでも幅広いスキルが身につきます。
フロントエンド〜バックエンドを幅広い基礎知識を学ぶ、という側面を感じました。
あとプロジェクト進行のユニットもあり、クラスの数名のメンバーでビジネスのプロジェクトを想定して要件設定からソリューション提案のプレゼンまで一連の流れを実践するクラスもあり、留学生の身としてはドキドキ(必死)でした…。
1年間の学習を通して、自分でWebサイトを設計・構築できる力が身につき、卒業後は企業のWebチームやデザイン会社で働くチャンスも。さらに、より専門的なDiploma(ディプロマ)コースに進むこともできます。
自分のような関連経験や知識が無くてもしっかり予習復習、調べ物ができれば十分ついていけます。問題は英語力ですが、、入学基準現行でIELTS6.0とはいえ、6.5位まで持ってから入学すると安心かと思います。
「Web制作をちゃんと学んでみたい」「フロントエンドもバックエンドも基礎から学んでみたい」「ウェブ関係でフリーで仕事をやっていきたい」そんな人にぴったりだと思います!
勿論仕事の経験が何よりものを言う業界だとは思いますが、一歩を踏み出すこともまた大切です。クラスのメンバーは自分で事業をしていてウェブ制作を自社で完結したい留学生や、キャリアチェンジのためにコースに参加したという留学生もいました。様々なバックグラウンドを持って年齢も性別も国籍も本当に多様で楽しい空間です。
4. Certificate IV in Information Technology [Web Development] ユニット詳細
さて、構成されているユニットを紹介します。

ずばり、自分が履修したユニットは上記となります。
- ITの基礎と問題解決力の習得
- ICTSAS432: クライアントのITトラブルを特定・対応するスキル
- ICTICT451: 著作権や個人情報などIT倫理に関する知識
- ICTICT443: ICT業界でのチームワークとコミュニケーション
- Web制作に必要なプログラミング&マークアップ
- ICTPRG302: 基本的なプログラミング技術
- ICTWEB431: 検索エンジン最適化(SEO)
- ICTWEB452: HTML(マークアップ言語)の作成
- ICTWEB441: 動的Webページの安全な制作(JavaScriptなど)
- ICTWEB443: クライアントサイドスクリプト(JSでの動きのあるサイト)
- UI/UXとデザインスキルの習得
- ICTWEB434: Webサイトレイアウトの設計
- ICTWEB435: レスポンシブデザインの構築
- ICTWEB432: 基本的なページデザインと構成
- ICTWEB433: アクセシビリティ(使いやすさ)の実装
- サーバーやデータベースの基礎
- ICTWEB440: Webセキュリティの基礎(動的ページ制作)
- ICTWEB450: Webホスティングの評価と選択
- ICTWEB451: SQLを使ったデータベース操作の基礎
- IT業界の最新動向とサイバーセキュリティ
- BSBXCS404: セキュリティリスクの評価
- ICTICT426: 新しいテクノロジーの評価と応用
- コンテンツやトラフィックの管理
- ICTWEB431: SEOの実装
- ICTWEB446: Webトラフィック分析とレポート作成
- ICTWEB444: サイトへのコンテンツ移行
これらのプログラムを通じて1年間で私のような完全初心者でも「ベース知識をもとに一からウェブサイトを構築する」スキルをなんとか得ることができました。
社会人になって改めて体系的に勉強できる機会はなんて贅沢なんだろう、、という嬉しさもありました。
というわけでCertificateⅣを無事に終了したため、今Diplomaに奮闘中となります。
5.時間割(スケジュール)について
2024年の時点では週2日授業+オンライン授業でした。
※2025年の今移民局のルールが厳格化し、留学生は週20時間の受講がビザの必須要件となっています。そのため、当時は合計15時間程度でしたが現在はコマ数も増えています。
当時の時間割は月火+オンライン授業が一コマで、以下の感じでした。
月曜日に午前午後で10:00〜15:30に2コマ
火曜日は1コマ後に休憩が長く午前8:30〜17:30で3コマ
意外と余裕あるスケジュールですよね。クラスの時間自体は長いのですが、途中で休憩も挟んでくれます。授業はがっつり早めのペースなので自分は本当に集中してないとあっという間に置いてかれました。なので朝から夕方まで必死で気の抜けない時間となりました。
授業の合間の昼休憩でお弁当を持ち寄ったりTAFEのカフェで買った軽食を食べます。クラスのメンバーは基本的に固定なので自然と仲良くなります。とにかく自分から話しかけて交友関係をもてれば食事の時間も楽しめます。留学生も多く通っているので他の国の事情や他愛もない話が今思い返すと貴重だったなと思っています。
セメスターの後半になってくるとアセスメント(課題)の数も多く、また難易度も上がってくるので授業のない日は必死に追い込むことになります。平日は仕事もしているので夜と土日はずっとPCと向き合う日々となります。
授業はプレゼン資料とウェブサイト、動画など多岐にわたるリソースを使用します。TAFEではBlackBoardという教育系のポータルサイトを利用しています。このオンラインのプラットフォームに書く生徒が自分のIDで紐づいており、各セッションに使用する教材やアセスメントの進捗状況を確認することができます。
6. アセスメント(課題)の種類と攻略のコツ
むしろ私が知りたいところですが…。
1年やってきて見えてきたこともあるので、少し整理しておきます。
まず、TAFEの課題は大学のテストとはだいぶ違います。
というのも、成績にランクはなくてPass(合格)かFail(不合格)だけ。どれだけ頑張ったかよりも、課題の要件を満たしているかどうかが肝心です。
印象的だったのは、オリエンテーションのときに先生が言っていた「私たちの仕事は、あなたたちをPassさせること」という言葉。大学のようなグラデーションのある評価方法ではありません。
各課題には評価項目がはっきり書かれていて、「どこをどう書けばOKか」が意外と明確です。
提出期限は厳しいですが、早めに出すことは問題なし。自分は、少し不安な課題でもある程度仕上がったらさっさと提出して、先生にチェックしてもらってました。フィードバックをもとに再提出する形で、修正できるので助かります(※回数制限はあり)。
ビジネスでもよく言われますが、「完璧にしてから出す」よりも、「早めに出して相手と調整する」方が正解なケースが多いです。
TAFEの課題もそんな感じで、自分のなかでアセスメントの要件を満たしていると判断すれば7割位のクオリティでも一度出す、というのが自分なりのやり方でした。
TAFEは大学よりも実務に近くて、クライアントの要件に応える・納期を守る、という感覚が強いです。なので、“学問的に極める”というより、“実務で使えるようにする”という印象。
それが合う人には、すごく学びやすい環境だと思います。
アセスメントの中にはWebサイトをクライアントの要件を聞き出してドキュメント化した上でワイヤーフレームからデザインタイル、モックアップから作成してサーバーからサイトを作成、アップロードするような経験もありました。さらにそのウェブサイトのSEO準備を上げるように試みたりと、実践的で面白かったです。ちなみにこんなサイトを作ったりしました。

7. TAFE留学前に知っておきたかったこと- 費用・英語・準備
学費はこちらのサイトから確認できます。

2025年時点で授業料はAUD12,804(約1,200,000円)です。これにResource費用、教材費といった諸経費が加わります。
半年のセメスター毎の支払いなので約60万円を一回につき支払います。支払いはオーストラリア現地の国内送金やクレジットカード、Paypalが可能です。この費用自体は大学や語学学校に比べるとだいぶリーズナブルです。ただこれでも2024年から比較して数%値上がりとなりました。
支払い方法は分割も可能で、月毎に支払っている留学生が多い印象です。自分は各セメスター一括で支払いました。
英語力については現行の入学基準はIELTS6.0です。入学基準としてはこのスコアを満たせば十分です。ただし、授業の進行はこちらのペースに当然合わせてくれないので感覚としては6.5はあった方がいいと思います。意外にもIELTSアカデミックの特にライティングやリーディングが現実に即した内容だったと思います。文章提出のレポート作成の機会も非常に多いため、IELTSの勉強で鍛えたことは役立ちます。スピーキングについては本当いまだに苦労してます。ローカル生徒同士とのグループだとトピックの内容が3秒後には次に進行していたりするので、あっという間に置いてかれちゃいます。ここは辛いところですが積極的に自分からついていくしかないです。
▼IELTSの準備についてはこちらを参照ください。
でも何より大切なのはシンプルに「自分から質問する」ことです。
授業中特に聞くことなくても何でもいいので講師に一回は質問をぶつけることをマイルールにしてました。一回聞ければ抵抗もないし、アセスメントの評価基準が不明瞭なこととかあれば講師を捕まえて聞きまくった方がいいです。メールでも結構早く返信くれるケースもありました。生徒同士で相談しあってもいいんですが、確実なアンサーを最速で得るのは結局クラスで講師を捕まえて質問することです。せっかくローカル生の何倍も授業料払ってるので躊躇なく問い合わせましょう。
8. まとめ
以上、ちょっと長くなってしまいましたが、TAFEでのCertificate IV(Web Development)の体験を振り返ってみました。
正直、社会人になってからの留学って「本当にやっていけるかな?」という不安が常にあり、初めてのIT分野だったので、最初はコードを見ても何がなんだか…。でも、1年かけて振り返ると、地道に毎週課題をこなして、少しずつ自分の中に知識が積み上がっていく実感はすごく励みになりました。
TAFEの良いところは、理論だけじゃなくて「今すぐ現場で使える技術」をしっかり学べること。講師たちもフレンドリーで、わからないことを質問すればちゃんと向き合ってくれました。
まだまだ道半ばではあるけれど、ひとまずCertificate IVを修了できたことで、ようやくスタートラインに立てたような気がしています。今はDiplomaの課題に追われつつ、引き続き頑張ってます。
もしこのブログが、これからTAFE留学を考えている誰かの背中を少しでも押せたら嬉しいです。不安もあると思いますが、ちゃんとやればちゃんと進める、そんな場所だと思います。
もしTAFE留学のことで質問や相談があれば、留学エージェントの経験もありますのでお力になれると思います。ぜひコンタクトフォームからご連絡ください!